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原状回復ガイドライン
- 原状回復ガイドラインとは
敷金精算のトラブルが増加していることから、借主及び貸主の費用負担を裁判事例に基き、国土交通省が妥当と考えられる一般的な基準をガイドラインとして作成したものです。
ガイドラインのため、法律ではありませんが、裁判になった場合、原状回復ガイドラインが重要なポイントとなります。一番大切なことは契約時に不動産会社から居住中、退去時における費用負担について、よく説明を受け、双方納得した上で契約することです。(敷引と特約については不動産会社も取扱いを知らないケースが多いため特に注意が必要です。)
現在、既に賃貸借契約を締結されている方は、一応、現在の契約書が有効なものと考えられますので、契約内容に沿った取扱いが原則ですが、契約書の条文があいまいな場合や、契約締結時に何らかの問題があるような場合は、このガイドラインが参考になります。
- 認められる契約書の特約について
原状回復ガイドラインでは、特約事項を設ける場合は、下記の要件を満たすよう要求しています。
1.特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
2.賃借人(借主)が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
3.賃借人(借主)が特約による義務負担の意思表示をしていること- 認められない契約書の特約について
最高裁判例 敷金返還請求事件 賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗について賃借人が原状回復義務を負う旨の特約が成立していないとされた事例
- 上記と違う観点
通常損耗を賃借人(借主)負担とする特約事項は、消費者契約法10条により、無効になる裁判例もあります。
民法420条により、契約の当事者は、損害賠償の額を予定し、契約で定めることができます。
これを損害賠償額の予定といいますが、賃借人が賃貸借契約に関して、賃貸人に損害を与えた場合に備えて規定するものであり、約定された損害賠償額が暴利行為に当って無効になる場合や消費者契約法により無効になる場合など、特段の事由がない限り、このような特約は有効と認められています。
賠償額を予定してそれを契約すると、退去時において実損額にかかわらず予定賠償額が賠償額となり、減額も増額もできないことになります。(※「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン 」より抜粋)参考:消費者契約法 (8条、9条、10条) 第三章 消費者契約の条項の無効
契約の中に業者の賠償責任を一方的に軽くするような「消費者に不当に不利益」な特約は無効- 認められる契約書の特約について
- 借主負担分(善管注意義務違反によるもの)
借主は、賃借物を「善良なる管理者の注意義務」でもって保管し使用する義務を負っています。
建物の手入れを怠ったもの、用法違反、不注意によるもの、通常の使用とはいえないものについては、借主の負担費用となります。
借主負担の具体例(原状回復ガイドラインからの一部抜粋)- 飲みこぼし等を放置したカーペットのカビ・シミ、結露を放置したことにより拡大したカビ・シミ、クーラーからの水漏れを放置したことによる壁の腐食、台所の油汚れ、冷蔵庫下のサビ跡
- 引越作業・キャスター付きイス等によるフローリング等の傷
- ペットによる柱等の傷
- 借主の不注意により雨が吹き込んできたような場合のフローリングの色落ち
- 風呂、トイレ等の水垢、カビ等
- 日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損
- 重量物をかけるたみにあけた壁等の釘穴、ビス穴で下地ボードの張替えが必要なもの、天井に直接付けた照明器具の跡
- 貸主負担分(経年変化、通常の使用による損耗等)
通常の住まい方で発生するもの、建物の構造により発生するもの、入居者確保のために行うものについては、貸主の負担費用となります。
貸主負担の具体例(原状回復ガイドラインからの一部抜粋)- 家具の設置による床・カーペットのへこみ、設置跡
- テレビ・冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(電気ヤケ)
- 壁に貼ったポスター等によるクロスの変色、日照など自然現象によるクロス・畳の変色、フローリングの色落ち
- 借主所有のエアコン設置による壁のビス穴・跡
- 下地ボードの張替が不要である程度の画鋲・ピンの穴
- 耐用年限到来による設備・機器の故障・使用不能
- 構造的な欠陥により発生した畳の変色、フローリングの色落ち、網入りガラスの亀裂
- 特に破損等していないものの、次の入居者を確保するために行う畳の裏返し・表替え、網戸の交換、浴槽・風呂釜等の取替え、破損・紛失していない場合の鍵の取替え
- フローリングのワックスがけ、台所・トイレの消毒、専門業者による全体のハウスクリーニング
- 現状回復とは?
現状回復とは入居者が退去する際使用した部屋について修繕することをいいます。
誤解しないでいただきたいのが、入居の時と同じ状態に戻すということではなく、自然劣化については、修繕する必要がないということが常識となりつつあります。国土交通省が作成した原状回復ガイドラインでは、「賃借人(借主)の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人(借主)の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人(借主)負担としました。
そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしました。
→ 原状回復は、賃借人(借主)が借りた当時の状態に戻すことではないことを明確化
「通常の使用」の一般的定義は困難であるため、具体的な事例を区分して、賃貸人(家主)と賃借人(借主)の負担の考え方を明確にしました。
- 原状回復ガイドラインを詳しく知るためには
1)国土交通省住宅局ホームページ
2)賃貸住宅紛争防止条例(東京ルール)
3)賃貸住宅トラブル防止ガイドライン(ダウンロード)
4)礼金・更新料のない契約の普及を促進
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